
自然的条件、経済・社会的条件に対する分析および現地調査の結果から以下のことを述べうる。 1.パキスタンの持続的経済成長のためには、国内農業の一層の発展とその持続的成長が必要であり、援助供与国、国際機関等の援助としても一層、農業基盤整備に対する投資を重視する必要がある。特に灌漑システムへの援助が最も重視されるべきである。 2.援助の効率化の観点から、その援助対象は投資(援助)の点から見て、費用対効果の高く、維持管理が容易な分野が望ましい。従って、援助としては、現地に存在する資源(労働力をふくむ)を十分に活用したものであることが必要である、 そこで、灌漑に関して可能性のある政府開発援助としては、1)ダムや発電所の建設、2)灌漑施設の修復を含む維持管理(具体的には水路の三面舗装と排水設備の建設)が考えられる。いずれもパキスタンの農業開発にとって不可欠な重要性を持つが、湛水害・塩害問題および援助の効率性を考慮すれば、灌漑施設の維持管理が優先されるべきであろう。投資(援助)対象として「ダム・発電施設の建設」と「灌漑施設の維持管理」との比較をした場合、前者が大規模かつ長期的な投資を必要とする選択肢であるのに対して、後者は投資(援助)の技術的分割性(technological divisibility)を持ち、圃場用水路を一単位として事業を積み重ねていけばよく、小さな事業規模から始められるからである。 特に、圃場用水路への投資が最も費用対効果の高いものであると考えられる。なぜなら、その投資効果(労働力投入も含む)は受益農家に直接還元されるために、農村資源の動員が比較的容易となり、また農民の参加による長期的維持管理も期待できるからである。また、そこで必要となる資材も粘土など現地に存在する資材を有効活用することができる。従って、費用対効果の高さとその維持管理が容易であるという点から圃場用水路(給水および排水)の整備を優先すべきであろう。この場合、受益農家の直接参加が大きな役割を果たす場合が多いであろうが、これに対する積極的財政支援が特に重要である。 次に、管井戸の設置も、圃場内の水資源開発として望まれる。しかしその普及のためには安定的で、安価な電力供給がなされなければならない。また、地下水が塩基質である地域では、管井戸の設置によって塩害が深刻化するため、こうした地域の特定作業を急ぎ、そのような地域には管井戸の設置を制限する必要がある。また塩基水地域では代替的水供給が望めない以上、圃場用水路整備事業を優先して行う必要がある。 また塩害の改善も同様に、農村にある資源を十分に活用したものであることが望ましい。具体的には既に行われている、除塩効果を持つスーダングラスの活用、有機質
前ページ 目次へ 次ページ
|

|